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2020-08

日本人人質事件

積極的平和主義のリスク

 イスラム国における日本人人質事件については、噴るばかりである。誰がやっても有効な解決策はすぐに見つからないので、政府の無策をいま責めるべきではない。しかし問題がこのように展開したことについて、日本政府の対応が適切であったかどうか検証することも重要である。

 そもそも湯川遙菜(はるな)氏がイスラム国に拘束されてから久しいし、後藤健二氏の留守宅には昨年12月に身代金の要求が来ていた。もちろん政府も事実を把握していたはずである。この間、問題解決のために何をしていたのか。さらに、この時期に安倍首相が中東を訪問し、イスラエルとの協力関係を強調するという対外的デモンストレーションを行うことが、人質事件にどのような影響を及ぼすか、政府部内で十分な検討を行ったのだろうか。

 安倍政権は、国民の安全を守るためと称して、日本版NSC(国家安全保障会議)を設置し、深い情報収集と戦略構築を売り物にしてきたはずである。2億ドル(235億円)の身代金要求について政府高官は想定外と云ったと報じられている。それはあまりにもお粗末な話である。

 安倍政権が進めてきた安全保障や外交の体制づくりが、本当に国民の安全を守るのか。首相の言う積極的平和主義が、国民のリスクを高めることはないのか、この機会に熟慮する必要がある。

2015・01・25東京新聞本音のコラム
(法政大学教授山口二郎)


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